ジャルダンの魔譜ー序章ー

第十三章 人間

 薄暗い深緑の樹海のような部屋の中に幻想的な淡い光が灯り大きな木に吊るされたいくつもの宝石が光に照らされキラキラと輝いている。青白く骨ばった長い指が宝石たちを撫でるとジャラジャラと揺れた宝石たちはさらに煌々と輝いた。
 ーー生きるということは辛く苦しいことばかりだろう、だから俺が助けてやる。

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 天界で戦争がおき、多くの反乱を起こした天使たちが強大な磁力の闇の中へ落ちていった。
 戦いで弾けた天使たちの死骸や空間のゆがみからいくつかの惑星ができた。神々は『箱庭ジャルダン』と名付け聖物せいぶつを創り、育成し眺めては束の間の遊びとして楽しんで過ごした。

 最初は恐竜という聖物を創り、各々が育てた恐竜同士を交換したり戦わせるなどして楽しんだが、堕ちた天使たちはその惑星ごと壊してしまおうと箱庭ジャルダンに隕石を落とした。神々が可愛がっていた恐竜たちは絶滅してしまったが惑星ごと壊されることはなかった。

 天界の戦争は一時的に激しくなったが、しばらくすると神々は別の聖物をつくりはじめた。美しい草花を増やし、虫をつくり、動物をつくった。神々が創造した聖物たちにより生態系が生まれ箱庭ジャルダンをより青く、美しい豊かな惑星にしていった。

 次に堕ちた天使たちは別の手段を考えた。見た目を神や天使に似せて神々が壊すのをためらうようにし「殺戮と破壊」のみを目的に動くようにした生物を創り徐々に破壊していくことにしたのだ。

 魔界のマグマから生まれた悪魔を基とし魔界の土で固めてつくられたソレの中身は空っぽだった。

 神々の創った聖物の生態系から、はずれたソレは瞬く間に聖物を殺し、捕食し、箱庭に害をなす物質を作り出し、生態系を壊しはじめた。

 神々の中にはさまざまな災害や疫病を起こしソレらを壊そうとした神もいた。
 しかし堕天使や悪魔たちから知恵を与えられていたソレは繁殖能力や生存能力も備え数を増やしており、壊しきることはできなかった。

 またソレの外見を魔界の者たちの思惑通り気に入った神もいた。

 ある神がソレに臓物という中身を与え、感覚機能を与えた。ただの乾いた魔界の土でできていたソレの全身を聖水で満たすと「神への信仰と理性、善悪の思想」が与えられ、悪魔から植え付けられた本能に抗うようになった。
 
 天界と魔界のものたちはソレを天界と魔界の間の人形にんぎょう、『人間』と呼ぶようになった。こうして人間は本能と理性の間でもっとも苦しみ、愛される生物となった。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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はじめて書いた小説で難しいことも苦手なため誤字脱字や至らないところもあるかと思いますが、楽しみながらがんばって書いておりますのでよろしければ応援していただけたらうれしいです。

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